古くから伝わる伝統や職人技は、 それを継承する若手の存在が必要不可欠です。
何年も修行し、親方の技術を学び習得する。 その気の遠くなるような時間と精神力は並大抵のものではありませ ん。
しかしながら時代が移り変わり、 徒弟制度がなくなっていくにつれ、 良質な技術が伝承されていかないという危機に直面しているのです 。
時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、 この技術を後世に残していくためにAIを使うことができないかと いう技術開発が進んでいます。
技術は目で見て盗み、体で覚えるというイメージがありますが、 あらゆる角度で検証したデータを総合的に組み合わせれば、 職人技を数値化して再現することができるようになるのです。
例えば、熟練のマスターが淹れる珈琲も
珈琲豆にお湯を入れる量やタイミングをしっかりと計測してそのよ うにすれば再現することができます。
もっとゆっくり。
もう少し少な目。
という抽象的な言葉でしか表現できないことも、
25ccを29秒かけて注ぐ。 というデータグラフとリアルタイムで数値化していく秤を使えば、 体で覚えなくても、体系的に技術を覚えることができるのです。
特殊な作業工程をプログラミングして独自の製造ラインを作るには 、手間や開発費がかかりますが、AIを搭載した「 人間協調型ロボット」を使って、 作業の流れや工程を少しずつ覚えさせれば、 有能なアシスタントとして働くことができます。
このロボットは、 単純に一連の作業を覚えて再現するだけの従来のものとは違い、 作業の意図を理解しています。 工程の前後のつながりを把握しているので、 作業工程を人間に教えることもできるようになるのです。
熟練の技そのものを画像映像や言語情報から再現するにはあともう 少し。
これからも世界中で職人の技術を習得するロボットがどんどん開発 されていくことでしょう。